今日は久し振りの休みです。昼過ぎに目を覚まし,食事を終えてから私の家の狭いベランダに腰を掛けて,青い空にゆっくり雲が流れていくのをボーと見ていましたら,小学3年生の頃を思い出しました。
授業が終わったら,私たちは学校の4階にある科学室に走って行き,そこに秀才と言われるお兄さんに,手のひらに○印を書いてもらいました。そのお兄さんは,兵庫県で運動は日本一と言われるお兄さんで名前は憶えていません。そのお兄さんはいつも1人,科学室で勉強をしている,学校が誇り高き人でした。私たちは優しいお兄さんから○印をしてもらい,今日も頑張ったねと言われるのが嬉しかったのです。私は○印をしてもらうと成績が上がるというジンクスを信じて一生懸命勉強をして,3年生の3学期にはクラスで一番になり,4年生,5年生はいつもトップにいました。
ある時,町の銭湯に行きましたら,そのお兄さんと会いました。少しの時間だったのですが,「お兄さんは何で頭が良いのですか?」と聞いたところ,「俺は母さんが死んで,おじいさんとおばあさんの所にもらわれてきて,ひとりぼっちだよ。夜は1人で勉強ばかりしている。人間はひとりぼっちで淋しいから人に優しくする。俺は将来医者になる。貧乏は嫌だから金持ちになる。」という話をして頂きました。その時はただ漠然と聞いていました。それから10年後,私が19才の時に鼻の手術をする為に県立尼崎病院に入院しました。そのお兄さんは医者が着る白衣を着て歩いていました。私たちは挨拶を交わしたのですが,お兄さんは私の事を忘れているようでした。

私たちの人生は10年経てば色々な事があって,新しいものを受け入れる程,古いものは忘れてしまいますね。私も10年前をさかのぼると,目的を見失いそうになったり,世の中の流れに流されそうになったり,嫌な事から逃げ出しそうになりました。今でも私を見ていてくれる優しい人たちや,いつでも助けてくれる人がたくさんいますので,私は現実から逃げた事はありません。昔はワガママだと先輩から叱られました。お兄さんの10年は,ひとりぼっちで相当つらかった事かもしれません。私は今,考えると,このお兄さんの後姿を追っかけているかもしれません。70年間生かさせてもらうと,人生の師はたくさんいます。
1時間近くベランダで,ボーと青空を見ながらひなたぼっこをする私は幸せで有意義なひと時でした。また頑張るぞー。