お盆が過ぎた8月20日に私は中山寺に御参りに行きました。その後,神戸の三宮で私は友だちと7時に待ち合わせをしていましたが,三宮に着いたのが6時半でした。1時間少々時間がありましたので,喫茶店で時間を潰そうと入ったのですが,広いお店で客の出入りが多く,20分時間を潰すのが大変でした。土曜日でもありましたので,街を歩く人々も多く,身を持て余していました。日頃は忙しいので,1人になってボーとしてみたいと,いつも言っていたのですが道行く人々の中では到底,ボーとする暇はありませんでした。
私は6時過ぎに静かな喫茶店を見つけて,バックミュージックに耳を傾けていますと,隣の席にいた20才位の若者から声を掛けられました。「おじさんはどこから来たんですか?」「鹿児島から来たよ」
若者は「遠い所から来ましたね」「君は鹿児島に来た事はあるの?」「まだ無いですが,桜島が爆発するのを見に行きたいです」と言葉は丁寧で,優しそうな若者で,好感の持てる人です。
色々話していると,岡山から新幹線で金曜日の夜に来て,日曜日に帰って行くとの事です。私はその後の言葉で耳を疑うような事を聞きました。4年前に彼のお父さんは事業に失敗して,現在は行方不明になっているとの事で,岡山にはお母さんと妹さんと3人暮らし。神戸に出て来るのは,フリーのホストをしていて女性の相手をしてお金を貰い,数万円を持って日曜日の夜に帰って行くとの話でした。私はショックで,彼に掛ける言葉を失っていました。友だち3人で,このアルバイトをしています。大学は合格できるので,大学に行ったらこの仕事は辞めると話していました。

3週間経った今でも彼の無邪気な笑顔が頭から離れません。私は彼にしてあげられた事はコーヒー代を払ってあげた事だけです。彼は電話が来て出て行きました。「おじさんのような優しい人は少ないです。電話番号を教えてください」と言われ,私はショックのあまり,携帯番号が出てこなかったのです。彼は「1ヶ月に2回神戸にいます」と言って帰りました。

神様にお願いしています。今度彼と会う時は,りっぱな大学生でいてくださいと!