私がお好み焼屋を始めて3年目の事です。その頃は森進一さんの「港町ブルース」が流行っていました。
当時は大島紬がブームで,私の住む鹿児島では紬工場がたくさんありました。その中でもひときわ大きな紬工場の女社長さんは私を可愛がってくださいまして,毎日5~8つのお好み焼を買いに来て頂きました。私もその女社長が大好きでした。御年は82才で頭がいつも低く,私よりも低く頭を下げる素敵な方でした。

ある時,お話をゆっくり伺う時間があって女社長が私に言いました。「あなたは何才ですか?」私は32才と答えますと「朝めしと昼めしは立って食べなさい。夜ご飯をゆっくり食べたかったら」と言われました。朝めしは20才代と30才代,何も考えずに失敗を恐れずに一生懸命働く。昼めしは40才代と50才代,今迄の失敗と成功を踏み台にして考えながら成功を目指して生きる。夜ご飯は60才以降,口だけは達者だけど体が思うように動かないので,ゆっくり考えて余計な事は言わず,良い人に囲まれて楽しく生きるように心掛けるよう教えて頂きました。私はこの言葉が好きです。

一度にいくつもの事を考えようとした時,良い判断ができなかったり,気持ちが動かないようなときは,私はまだ昼めしの時かなぁと考えて,考えながら生きるようにしています。私は壁にぶち当たった時,実年齢は夜ご飯ですが,自分の心を強く持つために昼めしの時だと思って生きています。早く夜ご飯をゆっくり食べる生き方がしたいです。

皆様は朝めしを座って食べていませんか?後返りのできない道を私たちは歩いています。いつもしまった!という失敗の少ない一日を積み重ねて行ってください。