この時期になると,昔,大尊敬していた先輩を思い出します。
山口さん(仮名)と言いまして,お母さんと二人暮らしをしている先輩で,会社を定年退職されて庭いじりをされてる60才過ぎの良い方です。奥様に先立たれて,子供さんにも恵まれず寂しい御家族だったのを憶えております。
正月も過ぎて寒い1月でした。夜中に電話がありましてお母さんが心不全で亡くなったので,すぐに来て欲しいと言われ,お手伝いに行きました。
友だちも山口先輩に可愛がられていましたので,次の日の朝に来る事になっていて,その夜は山口先輩と二人で通夜をしていました。
先輩は大分県出身の方で関西方面に身内がいなくて,それはとても寂しい通夜でした。朝方4時頃になりますと車の通る音もせず,本当に寂しくて寒いでした。急に先輩は「長谷川,俺のつらい気持ちが解るか?」と言われたので,私は「はい」とだけしか答えられなかったのです。私の頭の中には今でも山口先輩の言われている意味が解らないのです。今年の4月に中山寺に修行に行った時,先輩の葬式で一緒にお手伝いをした友だちと偶然会いました。昼食を一緒にしまして,その時,友だちが私に山口先輩からのメッセージを伝えてくれました。先輩は7年くらい前に大分で他界したそうです。亡くなる時に大分から鹿児島に行って,私にもう一度私に会って話がしたかったそうです。私は何という薄情な人間だったんだろうと後悔しています。子供がいなかったので,私の事を心から可愛かったそうです。何も文句も言わずにニコニコしていた先輩の心を解ってあげられなかった事に今も落ち込んでいます。
5月から糖尿病の数値が良くないので必死で頑張っています。友だちからは,もう70才を過ぎているのだから早く仕事を辞めなさいとよく言われます。私は本当に友だちや周りの人様の気持ちが解っていないのかもしれませんね。
友だちの話では,山口先輩は私に財産をあげたかったと言っていたそうです。そんな大切な財産を頂いたら,ますます人の気持ちが解らない人間になりそうで恐ろしいです。
私もいつの日か誰かに「私の心が本当に解るか?」と言うのでしょうね。
気が付いたらいつも小さな自分がいるのです。